新たに始めた趣味

菊池 博愛 (弁護士)

 私はあまり趣味のない人間ですが,昨年から突如としてバイオリンを習い始めるという出来事がありました。私のことをご存じの方は私が楽器を弾くなど想像もつかないかもしれませんが嘘ではありません。
 習い始めたとは言ってもまだ1年も経っていませんので弾ける曲のレパートリーもせいぜい10曲くらいです。
 バイオリンを弾くにあたり現在最も難しいと感じていることは正確な音を出すことです。バイオリンはピアノのように鍵盤があるわけではありませんので正確な音を出すには正しい場所を指で押さえなければならずこれだけでも一苦労です。少しでもずれると不自然で気持ち悪い音になってしまいます。今はまだ初心者なのでバイオリンにシールを貼り,指を押さえる場所の目印にしておりますが,シールを剥がしてしまうと正確に押さえることができず中途半端な音ばかりが出てしまいます。
 また,右手と左手を別々に動かすことも私にとっては難題です。左手でビブラートをかけようとすると右手も左手の動きにつられて往復運動をしてしまいます。これではきれいなビブラートではなく細切れの音が出てしまうだけです。
 このように私のバイオリンのテクニックはまだまだ初歩の初歩なのですが,それでもバイオリンを弾いていると精神が安定するような気がします。
 普段仕事をしているとストレスがたまることも多く,昨年は体調を崩したこともありました。しかし,バイオリンを弾いていると昼間たまりにたまったストレスも(少しは)吹き飛び,心も落ち着いてきます。自宅ではあまり大きな音で弾いていると近所迷惑になるためなるべく小さな音で弾いているのですが,たまに周囲を気にしなくて良い環境で思い切り弾くととても気持ちが良くストレス解消になります。
 これまで無趣味と言って良い生活を送ってきた私ですが,もしかしたら一生続けられる趣味を見つけたのかもしれません。