川崎総合法律事務所

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高柳弁護士

2012年08月31日

刑事法における時効制度の大改正について(弁護士 高柳 馨)

1 刑事関係の時効には,刑の時効と公訴の時効があります。
刑の時効というのは、裁判で刑の言渡が確定した後、刑の執行を受けないことによる時効です。判決確定後、被告人や受刑者が逃走したときに問題となる時効です。公訴の時効というのは、犯罪後一定期間が経過することにより刑事訴追(公訴)が許されなくなるという時効です。一般に言われる時効は、この時効です。

2 刑の時効は、刑法32条に定められていますが、平成22年4月に大きな改正がありました。次のように、改正されました。下線部が改正により,変更された部分です。
  刑法32条 時効は、刑の言渡しが確定した後、次の期間その執行を受けないことによって完成する。
    一  無期の懲役又は禁錮については30年
   二  十年以上の有期の懲役又は禁錮については20年
   三  三年以上十年未満の懲役又は禁錮については10年
   四  三年未満の懲役又は禁錮については5年
   五  罰金については3年
   六  拘留、科料及び没収については1年

上記の下線部は,改正前は、次のようになっていました。
   一 死刑については30年
   二 無期の懲役又は禁錮については20年
   三 十年以上の有期の懲役又は禁錮については15年

3 公訴の時効は、刑事訴訟法250条に定められていますが、平成22年4月に大きな改正がありました。次のように、改正されました。下線部は,改正により変更された部分です。
  1項 時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く。)については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
   一 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については30年
   二  長期20年の懲役又は禁錮に当たる罪については20年
   三  前2号に掲げる罪以外の罪については10年
  2項 時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
   一  死刑に当たる罪については25年
   二  無期の懲役又は禁錮に当たる罪については15年
   三  長期15年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については10年
   四  長期15年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については7年
   五  長期10年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については5年
   六  長期5年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については3年
   七  拘留又は科料に当たる罪については1年

   改正前は、人を死亡させた罪であるかどうかを問わず、2項と同じでした。

4 このような改正が行われた理由を考える前に、刑事法における時効制度の存在理由を考えてみましょう。
 従来から、次のような二つの考え方がありますが、普通は,両者をあわせたものが時効制度の存在理由とされています。
(1)実体法説
  時の経過とともに、被害者の感情が癒され、社会の復讐感情が減少し、犯人に対する再教育の必要性が減少することで、国家の刑罰権が消滅する。
(2)訴訟法説
  時の経過とともに証拠(証拠物、証人)が散逸し、真実発見が困難になり、公訴権が消滅する。

5 それでは、平成22年に改正された理由を考えてみましょう。
 平成12年起こった世田谷一家殺害事件をご記憶の方も多いと思います。これは、両親と8才の長女、6才の長男が殺害された事件で、未だに犯人が捕まっておりません。このような鬼畜にも劣る罪を犯した極悪犯人に対し、時効により処罰を免れることを認めて良いのか・・・というのが,大きな世論となりました。この世田谷一家殺害事件の遺族らが中心となって結成された「殺人事件被害者遺族の会」(宙【そら】の会)、また、山一証券代理人弁護士夫人殺人事件(平成9年)の遺族である岡村 勲氏、光市母子殺害事件(平成11年)の被害者遺族である本村洋氏などが中心となって設立された「全国犯罪被害者の会」(あすの会)などが大きな世論を喚起し、マスコミを動かし、国会も動かして、法律が改正されたのです。
 これらの被害者の会は、時効については,概ね、次のように主張しています。
  ① 時が経過しても、殺人事件の遺族の被害者の感情は癒されない。
  ② 最近のDNA鑑定などの捜査技術が大幅に進歩し、犯人のDNAが特定されている事件では、犯人を特定する証拠物はなくならない
  ③「冤罪の問題」についてもDNA鑑定により他人を犯人と誤る確率は小さい・・・ など。

6 これに対して、日本弁護士連合会などは、改正法には問題があるとしています。私なりにまとめると,以下のようになります。
(1)まず、殺人事件についての時効がなくなることについては、次のような問題があります。
  ① DNAが特定されない事件など証拠が乏しい事件について、時効がないために、冤罪が起きる可能性がある。例えば、40年前の殺人事件について、目撃者が現れて捜査が行われた場合、犯人と名指しされた人にとり40年前のアリバイ立証などはほぼ不可能である。
  ② 警察は、殺人事件が起きた場合、ずっとその捜査を行わなければならないことになる(関連の証拠物を廃棄することができず、少なくとも形式的には捜査員をおいておかなければならない)。
(2)また、改正法は、改正法施行(昭和22年7月)前に犯した罪で施行時に時効が完成していない犯罪についても適用されることになっていますが、これについては、次のような問題があります。
 例えば、改正法施行時にあと1ヶ月で時効になる殺人事件(24年11ヶ月前の事件)の犯人についても、改正法は適用されて、公訴時効がないことになりますが、改正法施行時に時効が完成した事件と比べるとあまりにも不均衡となります。憲法39条「何人も、実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。」(事後法・遡及処罰の禁止の原則)に実質的に反するという意見もあります。

7 最後に諸外国の公訴時効の制度を概観してみましょう。
 まず、アメリカでは、連邦法により死刑に当たる罪は公訴時効がなく、それ以外の罪については、テロ犯罪、未成年者への犯罪などの例外を除き、一律5年の公訴時効があります。イギリスには公訴時効という制度はありません。フランスでは一般の重罪は10年で時効が完成しますが、集団虐殺など人道に対する犯罪については公訴時効がありません。ドイツでは、殺人のうち特に重い事案の公訴時効は30年で完成しますが、民族謀殺、殺人嗜好など特定類型の殺人については公訴時効はありません。

2013年04月11日

更なる法テラスの活用を(弁護士 高柳 馨)

 法テラスは,平成18年10月に開業し,本年は7年目を迎えました。
 法テラスは,全国各都道府県に地方事務所があり,支部も10カ所設置されております。神奈川県では,横浜市に地方事務所(法テラス神奈川),川崎市に支部(法テラス川崎),小田原市に支部(法テラス小田原)が設置されております。


 私は,法テラス開業から本年3月まで,法テラス川崎支部長を務めておりました。
 法テラスの業務は多岐にわたっていますが,ここでは,法律相談及び代理援助について説明します。


 法テラスの利用は,一定の収入以下の方に限られておりますが,例えば,4人家族の方では32万8,900円以下(川崎市,横浜市の場合)の収入であれば利用することができ,かなりの割合の方が利用できる制度になっております。
 法テラスの法律相談は無料であり,必要があれば代理援助制度(弁護士等※に事件を依頼すること)も利用できる点に特色があります。
 ※ 法律相談,代理援助は弁護士の他に認定司法書士に依頼することができますが,認定司法書士は,140万円以下の事件(簡易裁判所の管轄事件)のみ取り扱うことができます。以下,「弁護士」と記載した場合はこのような認定司法書士を含みます。

 法テラス川崎では,月曜日から金曜日まで,毎日午後1時15分から4時15分まで法テラス川崎の事務所で法律相談を行っており,その他に,契約弁護士の事務所の事務所相談も利用できます。相談は予約制ですが,現在は,それほど待たずに相談を受けられる体制になっております。契約弁護士の事務所での相談は,土日や夜間も行っておりますので,昼間に相談の時間が取れない方にも利用していただけるようになっています。

法律相談だけでは足りず,弁護士に事件を依頼することができる制度が代理援助制度です。弁護士に事件を依頼する場合,最初に着手金を支払い,事件終了後に報酬を支払うのが一般的ですが,代理援助では,この着手金や報酬を法テラスが立て替えて,後日,月賦で法テラスに返還していただく制度です。毎月の返還額は,原則1万円ですが,事情により月額5,000円や3,000円とすることも可能です。また,着手金や報酬の額は,法テラスが決定しますが,従来の弁護士の着手金や報酬より,かなり安い金額を基準としておりますので,弁護士に事件を依頼することがかなり容易になりました。

法テラスは司法改革の目玉の一つであり,平成18年の開業以来,その存在が一般に知られるにつれて,法律相談件数,代理援助件数ともにかなりの勢いで増加しました。しかし,平成23年からは全国的にほぼ横ばいという状況です。これは,主として多重債務事件(債務整理や破産)の減少に伴うものですが,法テラスを担う弁護士は,司法改革によりどんどん増えておりますので,もっと利用していただきたいと思っております。


 当事務所では,私は当然として,すべての弁護士が法テラスと契約をしておりますので,一定の収入以下の方の相談は,法テラス相談として無料とする扱いができます。お悩みのある方,何か問題を抱えていらっしゃる方は,一人で悩まずに,ご相談においで下さい。


【法テラス川崎】
http://www.houterasu.or.jp/kanagawa/access/kawasaki.html

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