弁護士会の川崎支部支部長として

本田 正男 (弁護士)

 本年度4月から神奈川県弁護士会川崎支部の支部長を務めています。
 神奈川県弁護士会は,横浜地方裁判所・家庭裁判所の管轄と表側をあわせ,横浜を中心とした本部と,4つの支部,具体的には,県西支部(裁判所では,「小田原支部」と呼称されています。),横須賀支部,相模原支部,川崎支部から構成されています。川崎支部以外の地域は,いずれも,複数の行政区画が対象となっているのですが,川崎支部だけは,文字通り,名が体を表していて,川崎市全体がちょうど弁護士会川崎支部の対象地域で,行政の各種サービスの及ぶ領域と,弁護士会支部の活動の範囲がまったく重なっているところに特色があります。
 私が弁護士になった20年前には,神奈川県内に事務所を置く弁護士の数は県全体でも500名程でしたし,その頃川崎支部には,弁護士は50名もいませんでした。しかし,今や,神奈川県弁護士会全体の会員数は1,600名を超え,このうち川崎支部管内の弁護士数もこの原稿を書いている時点で216名に上って,会員数は大幅に増えました。実際現在川崎支部の弁護士会員の過半数は,弁護士登録10年未満のいわゆる若手で,近頃の弁護士会の会員構成は,高齢化の進む日本社会全体の人口構成とは真逆になっています。また,川崎支部では,現在4分の1近く50名弱の会員が女性で,子育て世代の働くお母さん弁護士が多いこともかなり目立つ特徴になっていると思います。
 会員数の少なかった私が新人の頃には,たとえば,国選弁護の刑事事件ひとつとってもほとんどの支部会員が漏れなく取り組んで,ようやく,裁判所川崎支部で扱うすべての事件に弁護人をつけることができるというような状態でしたが,前述のような,会員数の増加に伴って,この間弁護士会が市民社会に対し提供することのできる法的なサービスの総体もまた飛躍的に増加しました。弁護士会独自のものに限らず,川崎市や法テラスなど様々な機関と連携して実施される法律相談によって,市民に対し法律情報を直接に届けることはもとより,川崎市の行う各種の事業に政策の立案段階から実施後の検証に至るまで関わるなど,裁判所の中での手続きだけには収まらないところにまで活動の領域を広げています。
 支部長という立場からは,引き続き,弁護士会の活動を量的にも拡大し,市内の隅々まで法的なサービスを行き渡らせたいと思う一方で,個々の弁護士の活動が魂の抜けた彫像にならぬよう,質的な面でも,全体として,古き良き伝統ともいうべき弁護士の品格を引き続き保持することに留意したいと思っています。そして,そのためにはやはり弁護士の本分である人権の擁護のために活動を行うという原点を常に見失うことのないよう意識を持ち続けることが,基本でありながら,非常に大切なことだと考えています。どうぞ,本年も人権の確保擁護に向けたわれわれ川崎支部弁護士の活動にご期待と叱咤激励をいただきますようお願いを申し上げます。