上海、杭州の裁判所を訪問して(代表弁護士 高柳馨)
平成18年10月20日から5日間にわたり、横浜弁護士会国際交流委員会中国視察団の一人として、上海と杭州に行ってきました。

まず、驚いたのは裁判所の物的設備とその裁判官数の充実ぶりでした。その充実ぶりに触れる前に、日本の身近な裁判所の状況を点描します。私の所属している横浜弁護士会川崎支部は、川崎市全市が管轄になっており、管轄人口134万人、裁判所は、地方(家庭)裁判所と簡易裁判所の合同庁舎がただ一つ、法廷数(家事と少年の審判廷を含む)は9、裁判官は15名(うち簡易裁判所判事3名)です。
次に、中国の裁判所のうち、最初に訪問した杭州市西湖区の裁判所を見てみましょう。同区には風光明媚な西湖があり(写真2)、中国の天国と言われているところです。



ここの第1審裁判所は西湖区人民法院であり、管轄人口60万人に対し、何と裁判官46名、裁判所職員101名という陣容です。裁判所建物は10階建、15、000平方メートルであり(写真4)、余りの巨大さに、私のデジカメでは全容をとらえきれないほどでした。法廷数は30、法廷には最新のIT関連設備や防犯カメラまで備えられております。法廷にも通常法廷(写真5)と大法廷があり、大法廷は大きな劇場を思わせるもので、東京地裁の大法廷(日本1)を上回る大きさのように思われました。




次に、上海市は、人口1、700万人の大都会ですが、第一審裁判所である基層人民法院が19、その上の中級人民法院が2、更に上級の高級人民法院が1つあります。その上は、日本の最高裁判所にあたる最高人民法院ですが、これは北京に置かれています。私達が訪問したのは、上海市第2中級人民法院であり、その下には10の基層人民法院が置かれており、管轄人口は800万人とのことでした。上海市第2中級人民法院も大変に立派な建物であり、法廷では裁判官にスポットライトがあたり、裁判官席にはパソコンが設置され、法廷の左右にはパソコンの中身や証拠書類などを映し出す画面も設置されておりました(写真6)。日本にはこのような法廷はありません。また、その大会議室は1000人以上を収容できる規模であり(写真7)、管内の裁判官を集めて会議をすることができるとのことでした。管轄の基層人民法院の裁判官数は、平均100名とのことで、上海市第2中級人民法院の下にある10箇所の基層人民法院の裁判官数は約1000名、第2中級人民法院の裁判官数は約270名とのことでした。なお、上海市には第1中級人民法院も置かれており、こちらは、第2より規模が大きいとのことでした。
単純な比較は困難ですが、裁判官1人あたりの人口を出してみますと、わが川崎市では、134万人÷15名=89、333人、上海市では、基層人民法院19で裁判官1、900名、人口は1700万人ですので、1、700万人÷1、900名=8、947人であり、上海市は、川崎市と比べて(人口比で)10倍近い裁判官がいることになります。これは基層人民法院だけの裁判官数ですので、中級人民法院(2つで約600名)まで加えれば、1、700万人÷2、500名=6、800人、人口比で川崎市の13倍以上の裁判官数になります。この陣容で集中審理をしておりますので、裁判も速く、民事事件は1人制では3か月、3人制では6か月で判決が出ているとのことでした。裁判所の物的設備と裁判官数の充実ぶりは見事というほかなく、日本は、欧米はもちろん、中国に比べても、まだまだ司法後進国であるとの感を深くしました。日弁連では、裁判官数を現在の2倍以上にとの要望を出しておりますが、10倍以上に充実したとしてもまだ中国に追いつかない実態があることを声を大にして主張していきたいと思います。横浜地方(家庭)裁判所川崎支部が、「現在の東京地方裁判所規模の19階建てになり、簡易裁判所を含む裁判官数が現在の10倍の150名、簡易裁判所が川崎市の北部にも設置され、裁判官1人あたりの手持ち事件が(現在の10分の1以下である)20件程度になり、迅速で適正な裁判が無理なく実現される」、中国から帰国して、このような夢を描くようになりました。