

相続に関する法律相談は、最近、増加傾向にあります。
日本社会の高齢化や、家族関係の希薄化などが影響しているものと思われます。
ここでは、代表的な相談事例について、Q&Aを掲載します。
相続に関するQ&A
<寄与分とは?>
私は、長男で、妻と共に両親の面倒を見てきました。
最近、父が亡くなり、父の相続についての話し合いになりましたが、両親の面倒をまるで見ていない弟と妹が法定相続分に従って財産をもらいたいと要求してきました。
父に遺言はありません。弟と妹の要求に応じなければなりませんか。
弟さんと妹さんの要求は、法定相続分に従った要求ですので、原則として、その要求に応じなければなりません。
しかし、次に記載のような問題がありますので、弁護士に相談することを勧めます。
- 1. 寄与分が認められることがあります。
- 寄与分というのは、お父さん(以下「被相続人」といいます)の療養看護などにより被相続人の財産の維持、増加について特別の寄与をした相続人がいる場合、その寄与分を考慮して、相続分を定めるものです(民法904条の2)。
寄与分は、被相続人の事業についての労務提供、財産上の給付についても認められています。
法律に「特別の寄与」とありますので、子が親の面倒を見るのはある意味で当然ですので、それを超えるような特別な寄与があるかどうかが判断基準になります。
相続人間の話し合いにより寄与分は定められますが、話が付かなければ、家庭裁判所が寄与分を定めることになります。 - 2. 特別受益が考慮されます。
- 特別受益というのは、被相続人から生計の資本などとしての生前贈与を受けた相続人がいる場合、その生前贈与を考慮して相続分を定めるものです(民法903条)。
例えば、被相続人に家を建てる費用を出してもらったとか、大学に一人だけ行かせてもらってその学費を負担してもらったなどの場合、その贈与金額を特別受益として、相続分を定めることになります。
(高柳 馨)
<遺言書の検認について>
母が先日亡くなりましたが、金庫の中から母が書いたと思われる遺言書が出てきました。遺言書の存在を知っているのは私だけですが、この遺言書をどのように扱ったらよいでしょうか。
私は、長女で、母が亡くなるまで母と同居してきました。私には、兄と弟がおります。
家庭裁判所に検認申立をする必要があります。
遺言書が封印されている場合は、勝手に開封してはいけません。
- 1. 検認というのは、家庭裁判所に、遺言書の形状などを確認してもらう手続であり、遺言書の保管者は、検認申立義務があります(民法1004条)。
ただし、公正証書遺言は検認の必要はありません(同条2項)。
封印のある遺言書(封に押印されているもの)は、家庭裁判所において相続人またはその代理人の立会いのうえ 開封しければなりません(同条3項)。
以上に反すると5万円以下の過料に処せられるおそれがあります(1005条)。 - 2. 検認申立は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所にする必要があります。
検認申立がなされると、家庭裁判所では、検認の期日を定めて、相続人全員に通知を出します。検認期日当日には、遺言書の保管者から遺言書の保管状況などについて事情聴取が行われ、遺言書の形式面(遺言書の筆 跡や陰影)について相続人からの意見聴取も行われ、そのことが検認調書に記載されます。
検認手続は、遺言書の形状などを裁判所が確認する手続であり、遺言書の有効無効を判断するものではありません。遺言書の効力を争うのであれば、遺言無効確認の裁判を地方裁判所に提起する必要があります。
(高柳 馨)
<相続の承認と放棄について>
先日、会社経営をしていた父が亡くなりました。
会社の経営はうまくいっておらず、父名義の財産は自宅の土地建物ですが、かなりの負債があります。今後、どのようにしたらよいでしょうか。
亡くなってから3ヶ月以内に、相続の放棄や限定承認の手続をする必要があります。
- 1. お父さんの相続財産は全体としてマイナスになる可能性がありますので、相続の放棄や限定承認の手続を検討する必要があります。いずれも死亡した事実を知ってから3ヶ月以内にお父さんの死亡時の住所地の管轄家庭裁判所に手続をとる必要があります(民法915条)。
相続の放棄は、プラスの財産もマイナスの財産(債務)も相続しないもので、限定承認は、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産(債務)を相続するものです。 - 2. 相続の開始を知ってから3ヶ月の期間が過ぎてしまうと単純承認したものとされますので、もし、3ヶ月以内に相続財産の内容が判明しないときは、とりあえず限定承認の手続をするか、家庭裁判所に考慮期間の伸張を申請しておかなければなりません。
ただし、考慮期間が過ぎてから、債務の存在が判明したような場合には、判明したときから考慮期間を起算するとの最高裁判所の裁判例がありますから、その期間内であれば、相続放棄などの手続をとることができます。
(高柳 馨)
<遺留分とは?>
母が死亡しましたが、母は、同居していた長男に全部の財産を取得させるという内容の遺言を作成していました。父はすでに死亡しており、母の子は、長男と弟の私、妹の3人です。
母の財産は、自宅の土地建物が5000万円、預貯金が3000万円あります。妹が結婚したときに、母は妹に、持参金として1000万円を贈与しています。
私は、兄に、どんな請求ができますか。
遺留分の請求ができます。
ただし、その意思表示は、相続の開始及び減殺すべき遺贈などがあることを知ってから1年以内にする必要があります(民法1042条)。
- 1. 遺留分というのは、法定相続人が最低限相続できる割合のことで、子については、法定相続分の2分の1が遺留分ですので、あなた場合には、法定相続分3分の1の2分の1、つまり、6分の1の遺留分があります。
お母さんの遺言は、この遺留分を侵害していますから、あなたは、遺言によってお母さんの全部の遺産を取得したお兄さんに対して、遺留分減殺(げんさい)請求をすることになります。
この意思表示は、お母さんが亡くなったこと及びあなたの遺留分を侵害する内容の遺言が存在することを知ってから1年以内にしなければいけません。意思表示をしたかどうかが争われることがありますので、内容証明郵便で、お兄さんに対して、遺留分減殺請求をしておくのが良いでしょう。 - 2. 遺留分の請求額については、次のように計算します。
遺留分算定の基礎となる財産は、相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して算定します(民法1029条)。
本事例では、自宅の土地建物5000万円、「預貯金3000万円、妹に対する生前贈与1000万円の合計9000万円が基礎財産になります。なお、妹の結婚の際の生前贈与については、相続人に対する特別受益になりますので、贈与の時期を問わず、遺留分算定の基礎財産に含まれることになります(民法1044条、903条)。
そうすると、あなたが取得できる遺留分額は、9000万円の6分の1即ち1500万円となり、これを、お兄さんに請求できることになります。
(高柳 馨)
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